
お判りでしょうか。ドアの写真じゃなく、ドアに立てかけられているアクリル製の枠。
蓋とかじゃないです。ワクです。ワク。
カクレクマノミ&サンゴイソギンチャクで始まったおじさんのマリンアクアリウム生活は、ヤエヤマギンポ、バートレットアンティアス、と種類と数を増やし、 脇役に暴れん坊ヤドカリと順調にお魚ライフを過ごしていました。
そんなおじさんが初めて入手したサンゴは、ライブロックのついでに買った、ツツウミヅタ(花のように開く真っ白なポリプ)&オマケのブルームウミアザミ。
ショップの水槽で見た、ゆらゆら揺れる純白のソフトコーラルに魅了されたからでした。
ソフトコーラルとはいえ、サンゴに手を出してしまったおじさんは、Webをふらふらしているうちに、まるでちっちゃなヒマワリのように明るく、華やかなマメスナギンチャクを知り、我が水槽にお迎えすることになりました。
そして、忘れることの出来ないコーラルフィッシュ誌Vol.30の付録DVD。
沖縄の金城さんが造られている「サンゴ畑」が紹介されていました。2011年2月の終わり頃でした。
巨大な人工イノーであるサンゴ畑はもちろん、朴訥とした話し方で、幼い頃の沖縄のサンゴ礁について話す金城さん。
その金城さん達が沖縄の海に放流するために、養殖しているサンゴとその周りの魚たちに、じわぁあああああっと、激しくないけど、ゆっくり、じっくりとしみわたってくるものを感じました。
なんかいけないクスリを飲んでピンク色の象が見えてる人みたいに、何言ってるかわかりませんが、ま、そんな感じなんですよ。
で、
沖縄の自然なサンゴ礁を取り戻すべく、活動している金城さんに感化されたのがきっかけなのに、なんでお前はそうなるんだ?というツッコミを受けながらも、遠くを見る眼差しになったおじさんの思いは「リーフタンク」を持ちたい、というところに結実したのでした。
そうなったからには水槽の横置いてあったテレビが机の横に吹っ飛び、空いたスペースにすっぽりとハマるMMC企画の「ORCA 60cmワイドタイプ・フルセット」が鎮座したのでした。
がりがり石灰藻掃除しないといけないサンゴ水槽の予定ですから、もちろんガラス水槽です。
90cm水槽の時は、破損にビビって「絶対アクリル水槽で!」と叫んでいたのは誰なんでしょうか。
到着したガラス水槽を眺めていると、フランジ無しのスタイリッシュ水槽。ここで急にフランジ無しに対して弱気になって、注文したのが一番上の写真に写っているアクリルの「ワク」すなわち後付けフランジなんですね。
まだ読んでいる人いますか。いなくても続くんですがw
この後付けフランジをシリコンか何かで水槽にくっつけて~と考えていたのが2011年3月10日のことでした。
その翌日、のんきに仕事していたおじさんは、ゆらゆら揺れる地震に対して、同僚と「結構揺れるね~」と会話している最中。
普段ならこんな事話している間に収まる地震 がどんどん激しくなり、座っていたキャスター付き椅子毎、前後左右に揺すぶられ、立っていた同僚はバランスが取れなくなり、床に手を突いていました。
窓から外をみると、向かいのビルがゆっさゆっさと左右に揺れ、机の上の書類がバサバサ落ち始めてもまだ揺れは収まりません。
フロアのアチコチから悲鳴が聞こえだしてしばらくして、ようやく揺れが収まりました。
騒然とする中、同僚が震源は東北だ、と教えてくれ、実家が三重県と遠いおじさんは一瞬安心しましたが、そのとき海を挟んで向かい側にあるお台場のビルから黒煙が上がり、同時に余震。その時東京タワーのアンテナが傾いているのが見えました。
親族が西の方にいる人は自分の安否を。東の方にいる人はその人たちの安否を、繋がらなくなる直前の架電で遣り取りしている間も余震が断続的に発生していました。おじさんもこのとき実家に連絡したあと、夜まで電話網は一切使えなくなっていました。海沿いのビルに勤務していたので、連絡が取れない間に、両親は津波に遭わないかとても心配していたそうです。
余震が続くので、とても一段落、は付かない状況で避難が始まる中、おじさん宛にメールが。
交換回線はすでに輻輳が始まっていましたが、パケット通信はまだ無事な時でした。
メールの内容はアクアトロニカが送ってきた水温異常のメールでした。
当たり前ですが、家の水槽が無事なわけないんですね。
90cm水槽はフランジ付きでガラス蓋がしてあったのでしずくが垂れる程度で済みましたが、フランジ無しの新60cm水槽は豪快に水をまき散らしていました。
海水ではなく、アク抜きと機材の動作確認のために真水を廻していたので塩害は無く、漏れた水は揺れで本棚から落ちた本がたっぷりと吸い込んでくれたお陰か、階下に迷惑をかける事はありませでした。散乱していた本は皆、だいたい2倍くらいに膨らんでいましたが。

アクアトロニカはイーサネットインタフェースを搭載できるので、それを利用して温度をロギングしていたのですが、60cm水槽から跳ねた水が電源にかかり、センサー自体が異常値を返して、その後信号が途絶えていました。
もちろん業務は終了なので、会社から家が近いおじさんは家に戻り、拭き掃除大会を開催している時に、テレビで津波が東北沿岸を襲っている場面を見ました。
同じ映像を見た方と同じく、おじさんも言葉になりませんでした。
その後の電力事情の逼迫と共に、新60cm水槽は封印となり、水をかぶった水槽台や機器等の交換をしながら、再開できる日を待つことになりました。